小説「オーデュボンの祈り」

伊坂幸太郎が作家として初めて世に出した小説「オーデュボンの祈り」。荻島と呼ばれる、世間とは隔離した世界で起こる不思議な出来事に、外から来た主人公がだんだんと巻き込まれていくストーリーです。このお話で出てくる人たちはどこか世間離れしていて、それでいて魅力的な存在なので、すごく好感が持てると思います。


荻島では、昔から「島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく」という言い伝えが残されています。普通ではありえないような人達が過ごすリアリティのない島で、外から来た伊藤は心のどこかでこの言い伝えを考えることになります。嘘しか言わない画家、地面に耳を当てて音を聞く少女、市場で一歩も動けなくなった女性、そして田圃の真ん中でしゃべりだすカカシ...。伊藤は、カカシの優午から、いくつかの助言を受けます。この助言が、彼の生活を大きく変えていくことになります。

さらに重要なのが、カカシの優午は未来が分かるということ。いつも島の人達から頼られ、特別視されてきた彼は、ある日突然誰かの手によってバラバラにされてしまいます。誰にこんな仕打ちをされたのか。さらに、未来が分かっているなら、どうしてそれを誰かに伝えなかったのか。さまざまな謎が伊藤を悩ませます。

ここから、いろいろな事件が起こっていくわけなのですが、最後に分かる事実はなかなか驚かされます。まさに偶然の産物というのか、それによって引き起こされた結果がこんなことになるとは思いもしませんでした。そして、島に欠けているものも最終には島の外からもたらされることになるのもすごいと思います。

最後に、カカシの優午は作られたときから優しい心の持ち主だったということ。顔もなくて、自力では動くこともできないただのカカシなんですが、それでも守りたいものを体を張って守りきったというところはすごく尊敬できます。いつも穏やかでいたいという気持ちは分かるような気がしました。

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