三浦綾子の著した氷点を上下巻とも読んでみました。最後まで読んでみると、これは当時ブームになる理由がわかる気がしました。必ずしも明るい話というわけでも、まして笑えるストーリーというわけでもないんですが、伝えようとする内容はかなり深いように感じました。
[blog] 氷点(上) - LostMemories
下巻では、陽子が成長して17才になるところまで書かれています。事あるたびに陽子の幸せを壊そうとする夏枝、それに対して昔の殺人の記憶もそろそろ薄れて陽子を許そうと考え始めた啓造、また陽子の出生の秘密を知ってひたすら彼女の幸せを大切にしようと考えた徹。それぞれ思いを抱いた辻口一家は、陽子に想いを寄せる北原の登場によって、また混迷を深めていきます。
下巻でも様々なエピソードが描かれているわけなんですが、最後の陽子の心境の変わり方は劇的で驚かされます。また、啓造が何度か考えていたように、心の支えを失ってしまった時自殺するのは正解か?といった問いや、実の娘のようにして育ててきた陽子を女性として見てしまうのは罪だろうか?と考える心境はなんだかわかる気がします。もちろん僕自身はまだ自分の子供がいるわけでもないんですが、もし同じような状況に置かれたとしたらかなり思い悩むんじゃないかなって思います。
それにしても、最後の方で現れる高木と啓造との関係はリアルに現実を表しているようでやや凹みます。お互いに信頼し合っている仲でさえも完全には理解しあうことはできず、この悲劇の元凶を生み出してしまっていたわけで、本当なら何も罪はないはずの陽子を苦しめる結果になってしまったし。もう少しなんとかならなかったのかな?って。
世間では、わりとお互いの誤解の上に成り立っているのかもしれないですが、誤解のない世界があったらどうなるんだろうと思わずにはいられない作品でした。続編もあるらしいので、また機会があれば読んでみたいと思っています。
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