ひさしく本が読めてなかったんですが、ちょっとした時間に読んでいってやっと読み切りました。三浦綾子が著した小説「氷点」。彼女の故郷が小説の舞台となる作品で、娘を殺された夫婦が、その犯人の娘を引き取ったことから始まるさまざまな出来事と人間の内面を描いています。
医者である辻口啓造とその妻、夏江は、ある時まではとても仲の良い夫婦でした。しかし、この関係も娘のルリ子が殺されてしまった時から一変してしまいます。本来はずっと夏江が見守ってやらないといけないはずだったのが、あることがきっかけで1人にしてしまったのが原因だったのです。
その後、犯人は自殺をしてしまい、怒りのやり場を失った夏江は、どうしても女の子がほしいと懇願します。しかし啓造は、夏江がルリ子を1人にしたのは浮気をしていたからだと思い、彼女への復讐のために犯人の子供を引き取ることにします。これが後々の辻口家族の大きな混乱のもとになっていきます...。
上巻と下巻とに分かれているので、まだどうなっていくかは分らないんですが、かなり丁寧に書かれていて、彼らがどんな感情を抱いたのかがすごくわかりやすいですね。逆にいえば、細かく書きすぎて想像の余地もないという気もしなくはないですが、丁寧に書かれていなかったらなかなか想像しにくいとも思います。
まだ三浦綾子の作品は全然読んだことがないので、かなり新鮮です。戦後どういう状況だったのかとか、お医者さんという立場がどういう風に見られていたのかとか。実際に使われていたかはともかくとして、医学的な用語(ドイツ語)もちょこちょこ出てきたりして興味深いですね。
同じようなお医者さんの話として、白い巨塔は有名ですが、この作品よりは時代の違いを感じずに読めるので、下巻でどんな展開になるのか楽しみです。
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