さだまさしが徳島の地を舞台に著した小説「眉山」。さだまさしといえば歌手のイメージが強いですが、有名になった小説も書いていたりします。映画化もされた「精霊流し」や「解夏」がよく知られていると思います。この小説「眉山」も、12日から映画が公開されています。なかなか評価がいいので、自分の中で今観に行きたい映画の1つになっています。
さて、その映画の内容とも重なるところがあるのですが、簡単にこの小説の紹介をしておきます。東京から徳島に越してきた母は、繁盛していた店を突然たたんで老人ホームの手配をし始めます。母は江戸っ子で、とても気前がよく、自分でなんでも進めてしまう性格の持ち主。娘の咲子は、そんな母にいらだちも覚えつつ、尊敬もしているのでした。
そんな母が癌という病に侵され、今年の夏を越せるかどうかという状況だということを医師を通じて知らされます。東京から戻り、母の看病をする咲子は、彼女の知人から昔の母の姿を徐々に知ることになります。どうして母はここまで知人に信頼されているのか。どうして母は徳島に引っ越してきたのか。そんな疑問を持ちながら、母と娘とで阿波踊りを観に行くことになります。そこでの予想外な出会いとは...。母を想う娘の心情を描いた感動的な作品です。
で、読んでみた感想ですが、まず予想外にもすらすら読める作品だったので、そこに驚きました。結末もなかなか良かったのですが、そこまで至るいろいろなエピソードが個人的には読んでいて楽しかったです。ここまで人情にあふれた人間っていうのは全く見たことがないですが、だからこそ最後のあの出会いのシーンは意味があるんだろうなと思います。本篇の最後にある解説も、読んでみてこんな読み方があるんだなって感心されられました。あんなふうに深く読めるようになりたいものですね。
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