昨年映画化もされ、非常に注目を浴びた作品の1つでもある東野圭吾著の小説「手紙」。強盗殺人犯の弟というレッテルを張られ、世間に幾度も裏切られた直樹に「犯罪者の兄を持つ」罪を償いきれるときが来るのか。加害者家族の心情を描いた作品です。
で、読んでみた感想ですが、これは読んでいくとだんだんへこんできます(>_<) 直樹の境遇があまりに可哀想なんで、世の中にはひどい人ばかりしかいないんだろうかと思えてきます。仕事に就くときも、音楽で暮していこうと決意した時も、彼女と出会った時でさえも。彼が感じた苦痛や諦めの心境を考えると、こんな報われない人生があっていいのかと感じずにはいられません。
服役中の直樹の兄からは、毎月のように手紙が送られてきます。全く変化のない刑務所の中では、兄は弟が苦労しながらも普通の生活が送れているとばかり思っています。でも本当は裏切られてばかりの直樹が、兄に対して憎悪にも近い感情を抱くのは想像に難くないです。事実、この手紙のせいで幸せを逃したエピソードも書かれていて、兄は刑務所からも彼を苦しめているようで、とても可哀想でした。
でも、実際に自分自身にそんな感じの境遇の人がいたとして、普通に接することができるかと言われると、なかなか難しいものかもしれません。僕は、これに出てくる直樹ほどは世間を知っているわけではないので、その時になってみないと分らないですね。
そんなわけで、後半になるまでは暗い展開なんですが、最後にどうなるか興味がある人は読んでみてください。直樹が「犯罪者の兄を持つ」罪をどうやって償うか。現実的で非情な結末なのかもしれないですが、最後の1ページで直樹が何を感じたのかを想像すると、すごく人間的な終わり方だと思いました。
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