書店でたくさんならんでいたので、どんな作品なんだろうって思って買ってみました。この小説「モルヒネ」を書いた安達千夏さんは、1999年に著した「あなたがほしい je te veux」で芥川賞候補に選ばれるなど、かなりの活躍をされています。近年はあまり発表作がないようですが、充電期間ってことなのでしょうか。
さて、今回読んだ小説「モルヒネ」では、脳腫瘍でピアノが弾けなくなったピアニストのヒデ(倉橋克秀)と、自殺するために医者になった私(藤原真紀)が登場します。以前付き合っていていたヒデと私は、今度は患者と医者という立場になって再会を果たします。彼が末期の癌であることが分かって、私はヒデの部屋を訪ねることになります。
彼が以前活躍していた場所、オランダのアムステルダムのあるコンセルトヘボウ(=コンサートホール)で最後の演奏を聞き、そして以前と同じように消えていってしまったヒデは、私のことをどんなふうに思っていたんでしょうか。細かくは書かれていないだけに、いろいろと想像できてしまいます。最後はあっさりと終わってしまい、ヒデが結局どうなってしまったのかも分からないんですが、彼は彼なりの意思で突然私の前から消えていったんだと思います。ストーリーの結末を追うより、その時々の心情を想像して読んだほうが楽しめそうなストーリーでした。
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