就活の時に読んでみて下さいと推薦された書籍に、大前研一氏が執筆した「考える技術」という本があります。この本には、目前の問題に対してどのようなアプローチをかけるべきかということが事細かに書かれています。彼自身の経験に基づく、解決への論理的思考がいかに大切かを強く強調されています。
詳しい内容は実際に読んでみてもらった方がいいと思いますが、企業の経営的立場からすればこの本は役に立つと思います。これからの経営方針などを決定する時は、さも直観的な判断に委ねられがちですが、そうではなく今の状態を直視し、論理的思考を行うことで合理的な判断が下せるということらしいです。このあたりの内容は非常に興味深く読ませてもらいました。
ですが、この本自体の内容が濃いかというと少し疑問です。彼自身の経験がいかに素晴らしいかということはよく分かるのですが、その内容が自分の目前にある問題に対して適用する時に何が重要であるかを考えてみると、「論理的思考を日常的に行うように頑張ること」の1つの集約できてしまうような気がします。言ってしまえば、「論理的思考を日常的に行う」ことで「こんな問題が解決できる」という事例集なだけではないのでしょうか。考える技術をどんな人にでも分かりやすく伝えようとした結果、文章の量の割には中身のないものになってしまったように感じます。
また、僕自身は彼の考え方に賛同できない部分もあります。彼はこの著作の中で、「今の経済はこれまでとは違う。ケインズ経済学が適用できるような時代とは全く違うのだ。」という趣旨の内容を書いていますが、全くと言いきれる根拠が何なのかをぜひ教えてほしいです。確かに現実の経済と、学問で取り扱う経済とは幾分かの違いが見られるのは仕方のないことだと思うのですが、完全に違うとなると話は別です。その根拠となる統計的なデータはあるのでしょうか。また、どうしてそういう結論に至ったのでしょうか。新しい経済になったというのは簡単ですが、そのあたりの説明がないのは非常に疑問です。
「ダメな議論」という本を読んでからこの本を読むと、とても違和感を感じます。これだけ、内容が違う本が世の中に存在するのも、世界の多様性というかなんというか。。。ちょっと呆れます。
僕は成功事例の自慢を聞きたいのではないのです。また、僕は政府に対する愚痴を聞きたいのではないのです。こういった内容のことなら、他の本でも得られるんじゃないでしょうか。
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