実家に帰る時に電車の中でひたすら読んでた小説「犬神家の一族」。幾度も映画化されているなど、横溝正史の代表作であり、非常に有名な作品のうちの1つです。どのような内容かは別のウェブサイトなどに任せるとして、ここでは感想と映画版との比較をしてみたいと思います。
で感想ですが、まず珠世の表現の仕方とかがすごく上手くて感心してました。ボートから救出された時の珠世と猿蔵の様子を想像してみると、この2人の関係がすごくイメージしやすくて、とても信頼してるんやなって思えました。いかに珠世が美人であるか、いかに猿蔵が力強い奴かってのが書かれてて、この2人はこの物語でどういう役割を果たしていくんだろうって興味を惹かれました。
八ツ墓村の作品でもそうだったのですが、横溝正史はよく「今から思えば、このとき無理にでも○○しておけばよかったのだ。」みたいな感じで、読者の注意がその出来事にいくように誘導しています。それが謎解きとか伏線の理解に一役買っていて、難解な謎でも「あー、そういえばそうだったな」と読者に思わせることに成功しています。こういう誘導ができるところが彼のすごいところですね。
映画版と比較してみると、映画版のほうが珠世により着目したストーリーになってますね。いかにストーリーをはっきりさせるかという点に苦心しているかが分かります。小説では、第4の殺人のときの暗示がちょっと陳腐?な感じがしますが、どうして逆さまになっていたかという理由はしっかりしています。でも、映画でそれをやるのは分かりにくいと言うことで無難な暗示になったんだと思います。
でも、逆に言えば映画版は、第4の殺人を無難にしてしまったがためにちょっとおかしな矛盾があったりします。要は凶器が違うから起こる矛盾なんですが、小説版では映画版のような血みどろなシーンはなかったというわけですね。あのシーンは強烈だっただけに小説版でもあるのかと思ってたのですが…。
そんなわけで、両者を比較してみると、両方ともちょこちょこ違和感を感じるところはあるのですが、個人的には小説版のほうが面白いように思えました。でも、映画もなかなかしっかり作られているので、まったく見劣りはしないですけどね。
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