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小説「チルドレン」

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伊坂幸太郎の6作目の小説「チルドレン」。この作品は実は短編集のようなものなのですが、それぞれがつながっているので、普通に章立てされた長編のようにも読めます。彼独特のユーモアも各所にちりばめられていて、かなり楽しく読める作品です。


この小説では、バンドをやっているちょっと(かなり?)変わった性格の陣内が銀行強盗に巻き込まれたり、家裁調査官になってから担当の少年にちょっかいを出したりするといったストーリーが描かれています。彼の友人である鴨居や、家裁調査官をやっている武藤、目の見えない永瀬はいつも振り回されっぱなしです。彼の独特の感性に呆れつつ、でも彼のような生き方も悪くないなとも思っている感じですけどね。

彼のように自分に素直で直感的に生きる生活は、僕にとってはかなり憧れです。でも、さすがに大勢に絡まれている人を代わりに殴りに行くっていうことはできないですがヽ(´ー`)ノ 面白かったのは、陣内が作った「侏儒(しゅじゅ)の言葉 トイレの落書き編」が出てくるあたり。武藤が陣内に本を借りて、それを担当の少年に渡すのですが、その本「侏儒の言葉(芥川龍之介著)」の間にこれが挟まっていて、爆笑されてしまうのです。きっとその時の武藤の気持ちといったら、気が気じゃなかったでしょうね?。でも、そんなユーモアあふれることをしてるのも陣内っぽいというのか、憎めないんです≧∇≦

一番初めの銀行強盗のお話も予想外な結末になってて面白かったです。さすが伊坂幸太郎は読者を飽きさせません!

小説「白夜行」

友人+後輩からの紹介で、以前から読んでみようと思っていた小説をおとといにやっと読み終わりました。東野圭吾が1999年に著わした小説「白夜行」です。この小説を読み終えてまず思ったのが、主人公の雪穂は亮司に対してどんな想いを持ち続けていたのだろうという疑問でした。


この小説の主人公である西本雪穂と桐原亮司は、ある殺人事件の容疑者の娘と被害者の息子という関係です。そこから始まって19年間、傍から見れば2人は全く別々の人生を歩んできたかに見えました。しかし、2人はそれぞれ別の事件に巻き込まれていくことになります。

2人の両親が関係する殺人事件を担当していた笹垣は、彼らの生活をひそかに調査しつづけていました。彼らの周辺で起こる不可解な事件と彼らはなにかつながりがあるのではないか。そう感じた笹垣は、時効が過ぎてからもいろいろな人物から証言を得て、それらしい証拠をつかみます。笹垣が得た結論、そしてこのストーリーの結末は!?


と、簡単に紹介を書きましたが、なにしろ800ページ以上にも及ぶ長編なので、途中で出てくる人物や重要なストーリーも紹介できないのが残念です。とにかく長いですが、頑張って読めばなんとかなるはずです。(たぶん)

この小説の最終章ではとりあえずの結末が示されていますが、実は本当はそうではないかもしれないというところがこの作品の面白いところです。僕がひととおり読んだ感じでは、雪穂はものすごく頭の回る黒い女性で、自分の野望のためならどんな手段でも使うような人物のように思えました。でも、実際のところはどうなのか分からず、逆に本当に強い女性として実力を発揮しているだけなのかもしれません。

また、桐原亮司も実際のところ何を感じて、事業を興したり危険な橋を渡るような真似をしたのかは分かりません。最後であのようなことになってしまったのも、実は意図していたのか、それとも追い詰められた結果そうせざるを得なかったのか、謎は深まるばかりです。

さらに、途中の時代背景の描写はさすが東野圭吾というのか、すごいよく調べられてるように思いました。そういった面も含めて、非常に興味深い作品でした。

小説「眉山」

さだまさしが徳島の地を舞台に著した小説「眉山」。さだまさしといえば歌手のイメージが強いですが、有名になった小説も書いていたりします。映画化もされた「精霊流し」や「解夏」がよく知られていると思います。この小説「眉山」も、12日から映画が公開されています。なかなか評価がいいので、自分の中で今観に行きたい映画の1つになっています。

さて、その映画の内容とも重なるところがあるのですが、簡単にこの小説の紹介をしておきます。東京から徳島に越してきた母は、繁盛していた店を突然たたんで老人ホームの手配をし始めます。母は江戸っ子で、とても気前がよく、自分でなんでも進めてしまう性格の持ち主。娘の咲子は、そんな母にいらだちも覚えつつ、尊敬もしているのでした。

そんな母が癌という病に侵され、今年の夏を越せるかどうかという状況だということを医師を通じて知らされます。東京から戻り、母の看病をする咲子は、彼女の知人から昔の母の姿を徐々に知ることになります。どうして母はここまで知人に信頼されているのか。どうして母は徳島に引っ越してきたのか。そんな疑問を持ちながら、母と娘とで阿波踊りを観に行くことになります。そこでの予想外な出会いとは...。母を想う娘の心情を描いた感動的な作品です。

で、読んでみた感想ですが、まず予想外にもすらすら読める作品だったので、そこに驚きました。結末もなかなか良かったのですが、そこまで至るいろいろなエピソードが個人的には読んでいて楽しかったです。ここまで人情にあふれた人間っていうのは全く見たことがないですが、だからこそ最後のあの出会いのシーンは意味があるんだろうなと思います。本篇の最後にある解説も、読んでみてこんな読み方があるんだなって感心されられました。あんなふうに深く読めるようになりたいものですね。

小説「オーデュボンの祈り」

伊坂幸太郎が作家として初めて世に出した小説「オーデュボンの祈り」。荻島と呼ばれる、世間とは隔離した世界で起こる不思議な出来事に、外から来た主人公がだんだんと巻き込まれていくストーリーです。このお話で出てくる人たちはどこか世間離れしていて、それでいて魅力的な存在なので、すごく好感が持てると思います。


荻島では、昔から「島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく」という言い伝えが残されています。普通ではありえないような人達が過ごすリアリティのない島で、外から来た伊藤は心のどこかでこの言い伝えを考えることになります。嘘しか言わない画家、地面に耳を当てて音を聞く少女、市場で一歩も動けなくなった女性、そして田圃の真ん中でしゃべりだすカカシ...。伊藤は、カカシの優午から、いくつかの助言を受けます。この助言が、彼の生活を大きく変えていくことになります。

さらに重要なのが、カカシの優午は未来が分かるということ。いつも島の人達から頼られ、特別視されてきた彼は、ある日突然誰かの手によってバラバラにされてしまいます。誰にこんな仕打ちをされたのか。さらに、未来が分かっているなら、どうしてそれを誰かに伝えなかったのか。さまざまな謎が伊藤を悩ませます。

ここから、いろいろな事件が起こっていくわけなのですが、最後に分かる事実はなかなか驚かされます。まさに偶然の産物というのか、それによって引き起こされた結果がこんなことになるとは思いもしませんでした。そして、島に欠けているものも最終には島の外からもたらされることになるのもすごいと思います。

最後に、カカシの優午は作られたときから優しい心の持ち主だったということ。顔もなくて、自力では動くこともできないただのカカシなんですが、それでも守りたいものを体を張って守りきったというところはすごく尊敬できます。いつも穏やかでいたいという気持ちは分かるような気がしました。

小説「贈る物語 MYSTERY」

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  • 綾辻行人

お正月に買って以来、かなりの間放置していたんですが、せっかくの旅行中にとれた時間で全部読んでみました。この本は、綾辻行人さんが他の人にぜひ勧めたいと思っている本格派の推理小説を集めたもので、綾辻行人さん自身が著わしたわけではないのですが、どの作品もかなり予想外な展開をしていて面白いです。

この短編集では、5つの分類で9の小説が紹介されています。その分類は、ミステリーを推理していく上で重要な、どのあたりが謎なのかといった視点+αです。「Who?」「How?」「Why?」「What?」「Challenge!」といった章立てで、どの作品も一筋縄でいかないものばかりです。

どれも特徴的ですばらしかったのですが、1つだけ選ぶとするなら「達也が笑う」という小説が一番印象的でした。この小説は、最後の解答編を読むまではきっと明快な答えが分からないと思います。綾辻氏の前ふりで、「答えは信じられないほどあからさまに、読者の鼻先に突きつけられているのですが―。」と書かれていますが、まさにしてやったりという感じで、見事にやられました。この逆転の印象は、「人形館の殺人」を読んだときの印象にとてもよく似ています。これはぜひ読んでみてほしい作品です。

小説「モルヒネ」

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  • 安達千夏

書店でたくさんならんでいたので、どんな作品なんだろうって思って買ってみました。この小説「モルヒネ」を書いた安達千夏さんは、1999年に著した「あなたがほしい je te veux」で芥川賞候補に選ばれるなど、かなりの活躍をされています。近年はあまり発表作がないようですが、充電期間ってことなのでしょうか。


さて、今回読んだ小説「モルヒネ」では、脳腫瘍でピアノが弾けなくなったピアニストのヒデ(倉橋克秀)と、自殺するために医者になった私(藤原真紀)が登場します。以前付き合っていていたヒデと私は、今度は患者と医者という立場になって再会を果たします。彼が末期の癌であることが分かって、私はヒデの部屋を訪ねることになります。

彼が以前活躍していた場所、オランダのアムステルダムのあるコンセルトヘボウ(=コンサートホール)で最後の演奏を聞き、そして以前と同じように消えていってしまったヒデは、私のことをどんなふうに思っていたんでしょうか。細かくは書かれていないだけに、いろいろと想像できてしまいます。最後はあっさりと終わってしまい、ヒデが結局どうなってしまったのかも分からないんですが、彼は彼なりの意思で突然私の前から消えていったんだと思います。ストーリーの結末を追うより、その時々の心情を想像して読んだほうが楽しめそうなストーリーでした。

新書「人は『感情』から老化する」

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本屋に寄ったときにちょっと面白そうだな、と思ってこの本を買ってみました。和田秀樹さんが著した新書「人は『感情』から老化する」では、年齢を重ねていくごとに、体だけではなく「感情」も老化していくことを述べています。しかも、感情のほうがより早くから衰えるという、やや刺激的な指摘です。読み始めには、感情老化度テストというものもついていて、なかなか興味がわく本でした。

端的にこの本の内容を述べると、「人間の頭は、刺激がないとどんどん衰えていってしまうから、新しいことに挑戦して、若さを保ちなさい」という感じです。挑戦することに意欲がわかなくなった時にはすでに「感情」は老化しているので、いつもとちょっと違うことをしようと心がけるだけでも違うみたいです。なんだか当たり前のような話ですが、きっとこの本を読んでみようと思った人ならまだ老化はしてないんじゃないかと思ったりして。

実は、この本は40才以降の方向けに書かれているので、僕みたいな若造が感情老化度テストをすると、どれだけ良い選択肢を選んだとしても実年齢よりも上回ってしまうという不本意な結果になってしまうのが少し残念。でも、個人的に役に立ったのが物事の覚え方。脳の記憶の分類には、「意味記憶」と「エピソード記憶」という2つがあって、年齢を重ねてもなかなか衰えないのが「エピソード記憶」なんだそうです。エピソード記憶というのは、自分の体験に関する記憶のことで、感情がゆさぶられた時の体験はなかなか忘れないらしいです。そんなわけで、ものを覚えるときは、そのときに感じた感情とセットにして覚えようとするといいみたいです。

そんなわけで、今からでも頑張って新しいことに挑戦するようにすれば老化を防げるんじゃないかなって思った本でした。でも、やっぱり40才以上の方が読まれたほうがタメにはなりそうです。

小説「ブレイブ・ストーリー(下)」

宮部みゆきが著した作品「ブレイブ・ストーリー」も、下巻で最後を締めくくります。上巻では、三谷亘ことワタルがどれだけ現実の世界でつらい状態になっているかが主に書かれていました。中巻では、現実とは違う世界、幻界(ビジョン)でワタルが苦労しながらも運命の塔へと目指す過程が記されていました。今回読んでみた下巻では、運命の塔へやっとたどり着き、ワタルがついに願い事をかなえます。最後はけっこう感動的です。

[blog] 小説「ブレイブ・ストーリー(上)」
[blog] 小説「ブレイブ・ストーリー(中)」


下巻では、破魔の剣に収める宝石を2つ手に入れることになります。1つめはアンドア台地と呼ばれる隔世の場所で、ファイアドラゴンに連れられて手に入れます。2つめは北の大陸で、友人でもありライバルでもあるミツルから渡されます。単純にはこんな感じなのですが、ここまで至るにはつらい出来事や、試練ともいえる体験をクリアしないといけないのです。

やっぱり泣けるのは、カッツやミツルとの別れのシーン。勇敢なカッツだからこそ最後まで強がりを言ってるあたり、余計悲しくなってきます。老夫婦が祈りを捧げるあたりもすごく重たくて、かなりジーンときます。

「幻界では、死ぬと光になるんだ。」 キ・キーマがそれらしいことを作品中に言っていたけど、光になっていくシーンも想像してみるととてもきれいそう。でも、すごく悲しいシーンでもあるし、リアルにこんなシーンに立ち会ったらどんなふうに感じるだろうって思いました。

最後にワタルが女神にお願いした願い事は、すごくRPCっぽい。でも、期待を裏切らないいい結末になったなって思いました。かなり長いストーリーだったけど、ワタルの成長していく過程を見るのは頼もしい限りです。すごく素直なつくりのストーリーでした。

小説「人形館の殺人」

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綾辻行人が、あとがきで一番好きな作品だと紹介している小説「人形館の殺人」。後輩からこの人を紹介されて3つめに読む作品です。この小説のストーリーは、僕が今までに読んだとこのないパターンで、すごく度肝を抜かれましたw

舞台となるのは京都市の某K大付近にある館です。その館には顔のない人形が飾られており、非常に不気味な雰囲気を醸し出しています。その館にひさしぶりに戻ってきた飛龍想一は、なにものかの手によって執拗な嫌がらせを受けるようになります。自転車のブレーキが壊されていたり、ポストにガラス片が入っていたり…。何かを示唆する不気味な手紙も届き、想一は不安な毎日を過ごすことになります。そしてある日、そのいやがらせは放火にまでエスカレート…。この事件の犯人は誰なのか?全く予想もされなかった犯人が最後に明かされることに!!


と、簡単な作品の紹介はここまでにして、読んでみた感想を。まず面白かったのが、登場人物に辻井雪人(つじいゆきひと)という売れない作家が出てくることw この名前を見れば、誰に見立てて書いているかは一目瞭然ですね(^O^)b しかもこの作家、「(略)ちょっと目先を変えて、ミステリーでも書いてみようかと(略)」とか「(略)『人形館の殺人』―とかね、どうです?面白そうでしょう?」とか言ってるあたりなんて、にやにやしてしまいますね。まるで自画自賛w さらには作品の後半で、犯人の手に落ちてしまうあたりが遊び心があっていいなぁと思いますね。

またこの人形館の設立の際に、へんな建物をたくさん建てた中村青司が関わっているんじゃないかという憶測も出てきたりして、謎は深まるばかりです。かなり考えてみたんですが全然分かりませんでした。でも、ある章になると一気に謎が解かれてびっくりしました。さすがにこの展開はないですよね。これを小説にしてしまう綾辻行人はすごいと思いました。

そんなわけで、この作品はぜひ読んでみてほしい作品の1つです。特に京都に住む人や、某K大に通っている人はより楽しめるかもしれませんね。綾辻幸人の某K大感がきっと感じ取れるかと思います。

小説「ブレイブ・ストーリー(中)」

宮部みゆきが著した小説「ブレイブ・ストーリー」の中巻を読んでみました。上巻は現世から幻世に至るまでのお話だったんですが、中巻では幻世で巻き起こる大きな2つの問題を解決していく場面が描かれています。

[blog] 小説「ブレイブ・ストーリー(上)」

主人公である三谷亘(みたに わたる)は、幻世にわたって運命の塔を見つけるための旅を始めます。一番初めに行き着いた町の宿屋で起こった傷害事件を解決し、1つめの真実の鏡を手に入れます。その後、町の人の話を聞いて南の大陸のさまざまな場所に行くことになります。悲しみを癒すために集まった人々が暮らす町、種族差別が激しい町、水族が多く集う町...。途中、仲間たちともはぐれたりしながらも、幻世の本当の姿を徐々に知ることになります。幻世は自分自身の内面を表す世界、そのことを少しずつ実感していく亘でした。

最後まで読んでみた感想ですが、上巻のリアルなお話と比べると本当にRPGゲームのような展開です。行き着く町の人にもいろんな特徴があり、それぞれユニークなストーリーが存在します。亘はそのたびに危機に陥ることになるのですが、ここから切り抜けることになるのだから不思議ですね。

全体的には、少しシリアスな雰囲気が漂っていますが、上巻と比べると少しマシになっているようにも思います。ただ、亘のお父さん似の人が出てきたときはびっくりしましたけどね。上巻はちょっと冗長なんじゃないかな?とも思っていたんですが、ここでこんな展開が待っているなら納得がいきます。

さて、この小説の下巻ではどんな結末が待っているんでしょうか。亘は運命の塔を見つけられるんでしょうか!?

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tetsuの日記・雑記です。
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